2006年3月3日、東京都江戸川区にあるタワーホール船堀でディスカスセミナーが開催されました。
今回の主催者は日本に輸入される熱帯魚関連の大手卸問屋、丸湖商事さんが主催者となり、講師にはこのディスカス業界では有名すぎるブラジルのエキスポーターWB-SABBYの小野田氏とK-2の山本氏がブラジルにおけるディスカスを取り巻くさまざまな現状を3時間にわたり話してくれました。私としても小野田さんとは1年ぶりの再会で、少し早めに会場に到着してしまった事も有りご挨拶とK-2の山本さんを紹介していただきました。
小野田さん!今回はサンパウロの話はないのですか?の冗談に、今回はマイクのスイッチを河田社長に握られているのでその話に方向が向いたら切られちゃうからね!と久しぶりの再会を嬉しく思い、今日は楽しみにしてますと言葉を交わしました。(サンパウロの話とは・・・ここでは書けませ〜ん!サンパウロは素晴らし街だとでも書いておきましょう)余談はこれくらいにして、今回、このセミナーに参加した人数はアマチュアの人が25名くらいプロショップ関係のオーナーさん、スタッフの方々が15名くらいでしたでしょうか。普段、ブラジル現地サイドの話はなかなか聞く事が出来ませんので参加者全員、興味津々でセミナーのスタートを待ちました。そして定刻、丸湖商事、河田社長のご挨拶からディスカスセミナーはスタートしました。

 WB-SABBY 代表 小野田啓佑 氏  K-2 代表 山本千尋 氏

WB-SABBY 小野田 啓佑 代表の講義

1.エクスポータービジネスとしてのディスカス
2.ブラジルで魚を採集するうえでの規制の現状
3.アレンカーディスカスに関して

1. エクスポータービジネスとしてのディスカス
ブラジルアマゾンからたくさんの種類の熱帯魚を全世界に送り込んでいるがディスカスとアピストは扱う魚種の中でも非常に難しい部類に入る。それは、ディスカスなど主観的な個人の好みが非常に強いため、輸出する側と輸入する側でいつも喧嘩が絶えないのが状態だ。金目はダメ!鱗の巻きがあってはだめ!目が大きい!などなど送って誉められた事など滅多にない!!と小野田氏言う。こんな事からもディスカスほど信用が重視される魚はいない。
漁師 → エクスポーター →インポーター → ショップ → 一般購入者 この流通経路の中で末端に行くほど要求がきつくなるそうです。日本の中でも、地域によってディスカスの好みもだいぶ違うそうです。関東はクリペアやマンガルが好き、関西はジャタプーやフェリースの様な大きなディスカスを好むそうです。

ワイルドディスカスの絶対的美の基準とは
小野田氏の考える、絶対的美の基準は体形、フォルムだと言う!わかりやすく言えば見た目の印象だ!
ディスカスは熱帯魚飼育の中でも他を寄せ付けない1段高い趣味であり、だからこそ絶対的部分がなくてはダメなのだ。そこでファッションショーに出るモデルの話になった、モデルは長身で美しくなければダメ!頭がデカく、小柄な体形ではモデルとしては成り立たない!モデルは見た目の印象が良くなければと(小野田節炸裂です!)ヨーロッパのドイツやオランダはディスカスに対して論理をもって良し悪しの基準がはっきりしている。その第一は個体のフォームだそうです。ディスカスの鱗の巻きがダメ!と言う日本人はいつもこうやって!魚を見ているのですか!!と手に持つ資料を顔につけるほど近くに寄せて話す。2メートルくらいの離れた所からディスカスを見たとき一番気になるのは体形でしょ!と。
今期からWB-SABBYはシェープ(体形)で価格を決めて行くそうです


2.ブラジルで魚を採集するうえでの規制の現状
ブラジル環境省の専門機関 IBAMAの一昨年6月に出された規制はディスカス採集にかなり厳しい現状をもたらしているそうです。州によって規制は異なるらしいが11月〜2月の期間は魚の産卵期でもあるためディスカスはもちろん他の熱帯魚も採集してはならない場所も多くなって来ているとの事。もしアレンカー地域全てにこの規制がかけられたら、ディスカスの採集時期と重なりアレンカーは採集不可能になる可能性もあるそうです。今期は数十年ぶりの異常気象で旱魃(かんばつ)に襲わた、どこの川も水が全くない状態でアレンカー域もほとんど採集ができなかった状況のようです。ただアサラ地区だけは運良く入れたものの、30匹程度しか採集ができなかった。ここ近年、アレンカー域で採集された90%は日本に送っているそうです。日本がきっとアレンカーの血統を残すことの出来る唯一の国でもあるでしょう。それと、日本のディスカスファンも今後はブラジルの動向を知る必要もあるでしょうと小野田氏は語る。SABBYもK-2もブラジルのシッパーとして仕事の70%は政府環境庁との戦いに時間を費やしているとの事です。

3.アレンカーディスカスに関して
WB-SABBYは1997年からこのディスカスでのビジネスを始めたそうです。
当時はゴイアニアと言う場所でビジネスを始めたものの、アマゾン河からかなり離れた所での厳しいスタートとなった。
日本に置き換えれば、東京と仙台くらい離れた場所であったとの事。当初はアレンカーのディスカスは人気が無かったがドイツのオトリック氏がアレンカー域の魚を使い改良品種のベースで使ったそうです。レッドターコイズの赤、レッドエディーの赤もアレンカー域の魚がベースになっている、その中でも、ブルーベースの赤とイエローベースの赤があるそうですが、ブルーベースの赤は非常に価値のある赤だそうです。80年代には1匹1万ドルで売り買いされた時期もあった。南岸アレンカーはラーググランデが代表とされ、北岸アレンカー域はサンタレンの北側をアレンカーの中心とみるそうです。ジャタプーとフェリースは西岸の位置にあるそうです。その中でもやはり北岸のクリペアの赤がベストとされているようです。クリペア1とクリペア2も2kmくらいしか離れていない場所で、こんな奇麗になるディスカスが住んでいるとは思えない程汚い川で周りが牧場、日本の皇居くらいの運河であるとの事です。マンガルも非常に近い場所らしく水位が高くなると同じ水域になってしまうそうです。カラナンザルとイナヌも非常に近い場所で生息する水はほとんど同じらしいです。ただ、取れる時期と場所が違うだけとの事。ジャタプーとフェリースも近い場所のようです。

そして、数年前のカラパリエリアでのワイルドディスカス採集の様子がスライドで映し出された。


K-2 山本 千尋 代表の講義

1.山本氏の講義はスライドを見ながらのお話で始まった。

マディラでのディスカス採集の一部始終

数々の採集個体 採集風景

2. 山本氏、ディスカスの魅力

ディスカスの魅力やチャームポイントはたくさんあると思います。個体が表現するデザインバリエーションの豊富さ。他の魚には無い丸い体型、人にも慣れる習性、特殊な子育てもします。水槽の隅にかたまり飼育者についてのミーティングもしていますね?考えただけでもディスカスの魅力はたくさんあります。やはり奇麗でなくてはダメというのも魅力のひとつになるはずです。しかし、ブラジル現地サイドではかなり難しく大変な要求もインポ−タ−から言われているのも事実です。若いディスカスでなくてはダメ!絶対、歳をとったディスカスは送ってくるな。(小野田氏同様、インポ−タ−から誉められる事はほとんど無いと話してました)セミロイヤルはマーケットに上がらないので安くなってしまいます、ましてや金目も。そんなにロイヤルですか!ロイヤルは採集した全個体の中でわずか2%しかいないそうです。ましてや完璧なソリッドを求めるなら1%の確立だそうです。漁師からはダメなものまで買い取ってあげないと生活が出来ないので買い取りますが現地の事情はダメなディスカスの方が本当に多いという事もわかってください。それとMサイズのディスカスの価値を改めて考えたいとの話もありました。質問時間の中でこの手のMサイズを購入し飼育したいというマニアの人の声もありました。金目のディスカスでもラインの綺麗な個体はたくさんいます、ロイヤルだけにこだわらず、何か特徴のあるディスカスを改めて考える必要性もあると思う。そして、山本氏は現状のコンテストでロイヤル系が主流になっていますがフォーム部門が出来ても良いのではないかの提案もありました。


最後の質問コーナーでインポーターの丸湖商事、河田社長からの質問で、昔から比べるとロイヤルはなかなか取れないと言う割に最近ロイヤルの比率が多くなっている気がしますがそのあたりどうなんでしょう?

山本氏
採集される場所の違いやその年のディスカスの状況でそのような現象があるのかもしれません。



セミナーに参加しての感想
今回のセミナーに参加して、普段聞けない現地での話や諸事情は少しはわかった気がします。ロイヤルを求めるマニアにとって高価なディスカスになってしまうのも年間採集のわずか1〜2%の物を手にしたいという欲望と考えればいたしかたない事となるのでしょうか。但し、今回のでセミナーは厳しい事を書くようですがエクスポーターとインポーターが主催しているセミナーである事も頭のどこかに入れて聞く必要性も感じてました。それと今回、これだけは絶対に山本さんに確認したい事が直接ご本人に確認できたのでそれだけでも十分でした。その確認とは、我が家で飼育しているワイルドアレンカーイタペクル、ワイルドのインボイスネームでイタペクルと言う産地は今まで聞いた事がなく読み間違いがそのまま伝わっているのかをシッピングをした山本氏ご本人に直接聞いてみたかったのです。この個体を私が手にするまでの経路はかなりはっきりしているのでその話をしたところ、山本氏もその時に送った個体に関してはっきり覚えていてくださり、間違いなく、イタペクルです、今は採集に行ってない場所ですがラーゴグランデ、南岸アレンカーですよ!その言葉で、ますますこのイタペクルの貴重さを実感しました。今回のような企画を考えてくださった丸湖商事さんやプロショップの方々に感謝いたします。また、このような企画が全国各地で開催され少しでも多くのマニアの方々がワイルドディスカスの魅力を感じてくれればと思います。